
無過失責任主義:責任の所在を改めて考える
- 無過失責任主義とは
-# 無過失責任主義とは
日常生活において、私たちは誰かに損害を与えてしまう可能性があります。うっかり物を落としてしまったり、誤って誰かとぶつかってしまったり。多くの場合、これらの損害は故意によるものではなく、予測することも困難です。しかし、たとえ故意や過失がなくとも、損害を与えてしまった場合には責任を負い、賠償をしなければならないという考え方があります。これが「無過失責任主義」です。
従来の考え方では、損害賠償を請求するためには、相手に故意や過失があったことを証明する必要がありました。しかし、現代社会では、科学技術の進歩や企業活動の複雑化に伴い、事故の原因を特定することが困難なケースが増えています。このような状況下では、被害者が泣き寝入りしてしまうケースも少なくありません。
そこで、被害者を救済し、企業に安全性の向上を促すために、無過失責任主義が重要視されています。無過失責任主義は、特に製品欠陥による損害賠償責任において適用されるケースが多く見られます。製造物責任法などがその代表例です。
無過失責任主義は、責任の所在を明確化することで、企業の安全に対する意識を高め、結果として事故や被害の発生を抑制することに繋がると期待されています。しかし一方で、企業にとって過剰な負担となる可能性や、技術革新を阻害する可能性も指摘されています。そのため、無過失責任主義の適用範囲については、慎重な議論が求められます。